ほんの少しの独り占め

今年の紅葉。

この時期の京都は本当に驚く程の人で、それはもうわかり切ったことなのですが、風情という言葉を探そうとすると、静か〜に眺められる場所は無いかな、なんて思ってしまします。どうしても。

天の邪鬼な所も多分にあるので、無謀にも穴場を探そうなどど恐れ多いことを考えたりもしました。

 

昨年は北野天満宮で充分楽しませて頂いたので、今年は自宅の周辺を満喫してみようと妙心寺の大法院に行きました。

妙心寺の敷地は宏大ですが、どこも整然としていて本当に美しいです。

散歩で時々通り抜けるお気に入りの場所。

大法院の庭は茶室に付随する「露地庭園」という作りだそうで、その簡素な美しさに辿り着いた瞬間ため息が漏れました。

こんな近くなのに知らなかった。初夏の青紅葉もとてもきれいだそうです。

今日はお天気も曖昧で、雨は上がったものの薄曇りの夕暮れ間近の空。

幸い人も少なく、縁側に座ってお茶とお菓子を待っていると、ふと他に誰も居ないことに気づきました。

思いがけず願いが叶った一時。

ほんの束の間でしたが、静寂の中で庭を眺めお茶を楽しむことが出来ました。

この静けさを胸に焼き付けて制作の時間に持ち帰ろうと思いました。

頂いた案内に書かれていた『且座喫茶(しゃざきっさ)』の文字。

「まあ、座ってお茶でも一服召し上がれ」という意味の禅の言葉だそうですが、ほんのひと呼吸が心を整えるものですね。

年の瀬の慌ただしい時こそ、一息つきながらゆとりを持って机に向かってみます。